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Jekyll&&Hyde

昨日は晴れ、今日は朝。

科学の時間 (2) 理想気体の状態方程式 パート2

武田邦彦先生

 先回の検討を受けて、

PV = ST

理想気体の状態方程式で、

S = 1

という状態が理想気体であると、とりあえず仮定してみる。

 科学では仮定はどんなに乱暴でも良い。その仮定が間違っていれば否定されるだけだ。誰にも迷惑はかけない。だから、とりあえず理想気体エントロピー(S )を1.0としてみる。

 エントロピーというのは乱雑さを表す尺度である。つまり温度は振動の強さであり、振動は形が横を向いていても縦を向いても同じだが、みんなが横を向いている方がエネルギーは小さいし、バラバラの方がエネルギーは大きい。だから同じ温度でも「バラバラ度」がいる。それがエントロピーであるとされている。なぜ、温度にエントロピーを乗じるのかはまた別の機会に整理をしてみたい。

 ところでエントロピーはすでにBoltzmannが、

S = k ln Ω

という式を出していて熱力学の基本式の一つである。


932e1866.jpg

(写真提供:東京大学物性研究所 榊原研究室)

 これを普通の尺度で考えると、ボルツマン定数k は気体定数R をアボガドロ数NA で割った値だから、

で、R はJ/(mol・K)で、NA は個/molだからk はJ/Kとなる。つまり一つの分子や振動子が持つエネルギーをE とすると、



であり、温度T のN 個の粒子群のエネルギーの係数がk であると考えても良いし、エネルギーと温度を結びつける係数としても良い。k をR を使って少し変形すると、



 この式はわかりやすい。気体とか理想気体ということではなく、ともかくある粒子の集まりを考えると、温度に依存するエネルギーはnRT であるということを言っている。このことは次のようにも考えられる。



 理想気体の状態方程式が、

PV = nRT

であるということはnRT の方は理想気体に関係なく、圧力と体積のかけ算、つまり力学的エネルギーの方がPV と書けるのが理想気体ということになる。

 そこでもう一回、気を取り直して基礎から出発する。まず、温度の尺度を変えれば容易にR = 1になるので、k はアボガドロ数の逆数になる。そうするとエントロピーは、



となり、乱雑さのΩの対数アボガドロ数で除した形をしている。つまりエントロピーは、mol単位で示すからである。

 たとえばAとBの2つの状態を取る粒子群がある場合、粒子が一つならΩ = 2, 二つなら22 = 4だから、N 個なら2N である。1molの粒子群がそれぞれ2個の場合を取るとすると、



 つまり、粒子が2つの場合を取る時のエントロピーの値はln 2 = 0.693となることを示している。

 不思議なことだ。ボルツマン定数k は、

E = NkT

であるから、molとは関係が無い。1個の振動子のようなものを考えると、温度がKで、エネルギーがJなのでそれをつなぐ係数として、単位がJ/Kである換算係数に過ぎない。

 換算係数にしか過ぎないのにmolが関係するのは温度の単位が定まらないからである。kT を温度の単位にすると、1.38×10-23 Jを1℃とすることになる。ものすごく小さな単位だが、1つの粒子がこのエネルギーを持つ温度だから、この程度になる。

 つまり温度は強さを示すもの・・・示強性変数・・・だから、mol当たりならR になり、1分子当たりならkとなる。いずれも温度の刻みは同じである。問題はそこにあるのではなく、molという一つの固まりを基準にするかだけである。

 1 Kを8.314に分割すると、1/8.314 Kになる。そうすると、今、1KのエネルギーはR = 8.314 J/(mol・K)をかけて8.314 J/molのエネルギーになるが、温度刻みを分割しておけば1/8.314 Kになるので、そのままエネルギーである。それにn 、つまりmol数をかければJになる。

 同じように、1Kを1.38×10-23に分割するとkT はこの細かさになるので、1分子のエネルギーは単にT になる。つまり温度の刻みを分子に合わせるとアボガドロ数が出てくることがわかる。

つづく